
近くて遠い地元埼玉は荒川の源流部にはニッコイウイワナとヤマトイワナどちらの特徴もある秩父イワナと呼ばれるイワナ
が棲んでいるという。
実は、12~13歳の頃、私は一度そのイワナに逢っている。
橙色の斑点を持つそのイワナの色彩、少年時代の遠い記憶の中で鮮やかな明るみを帯びたままなのだ。
キャンプの時につかみ取りしたイワナはそのまま炭火で焼かれその日の御馳走となった。
今から十数年前、秩父には何度も足を運んだのに何故かそのイワナに逢いに行く事は無かった。
それよりも本流に潜む大ヤマメの釣りに夢中になっていたからだ。
そのヤマメの流れを更に上流に行く事に魅力を感じなかったというのが本音である。
近くて遠い、それは同じ県内なのに車で二時間以上走り、さらに徒歩で山を歩かなければならない事を意味する。

目が回りそうな渓深くにそのイワナはいることは知っていたから、今回ガイド役、どうしてもイワナが釣りたいという九州の仲間を連れての釣行となった。
週末は全国的に春の大雨だったので、もしかしたら雪解けが一気に進むかもしれないという予感と雪代が納まらなければ釣りにならないという不安が入り乱れながらその渓を目差した。

イワナの釣り場、それは渓深く険しい場所も多い。
スタートして間も無く一匹のイワナを日陰の淵で見つけたが、ルアーの追いは鈍い。
無理も無い。ここは3月と言えど真冬に近い気温だ、渓のイワナが活発になるのにはあと2ヶ月は必要だろう。

日向であれば春の柔らかい日差しが祝福してくれるが、一変して日陰は氷と残雪の暗い世界。
それでもイワナ達は日向を嫌い、暗い流れに身を潜めていた。
程なくしてイワナを無事釣る事が出来た。
テクニックは必要ない、ルアーやカラーなどもどうでもいい。
この魚がいる場所へアプローチできるか出来ないかだけが結果に結びつく。

この橙色の斑点、黄色い腹部、そうこれが秩父のイワナだ、紛れも無くあの時逢ったイワナだ。

そして仲間もキャッチする、歓声を上げて、握手を交わす。

少年時代の記憶と現実が重なり合うひと時、30年という月日を超えて、あの時、強烈に釣りたかった魚が今目の前にいる。

これから行ってみたい渓がある、逢って見たい魚達がいる。
仲間と分かち合いたい喜びという時間がある。
それがある限り、僕等の釣りは果てしなく続いて行くことだろう。
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- 2018/03/14(水) 00:18:22|
- 鮭・鱒族疑似餌釣
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三月、渓流解禁。

陽だまりに春が訪れるとカジカガエルの産卵が始まる。
小さな命のサイクルが途切れない事を確かめる度に、春の大きな喜びを得る事ができる。

日陰には残雪、朝の気温はマイナス4℃、三月とはいえまだまだ冬である。
ルアーフィッシングで魚を釣るだけならば少し時期を待って4月の雨以降に向かうのがベストだが、早春は早春の釣り方があり今回はそれを楽しむ事に。

ベイトフィネスという現代のスタイルで挑むは仲間のN氏、私は相変わらずの時代錯誤でABUにウエダにバリバス5ポンドという昭和フィネス。
二人でワイワイやりながらというよりは、ガイドしながら「もうちょっと奥、右だ左だと」野次を飛ばすスタイル。

スミスのエッジダイヤ3gでボトムを狙うと錆の残るヤマメが答える。
この魚もまた厳しい冬を乗り越えてきたことだろう。
魚が釣れる場所を把握したら後は相方を釣らせる為の時間となる。

放流ものではあるが良型のヤマメをキャッチしてもらい笑顔と賞賛の時間がしばし流れる。
僕等は春を待ち侘びていた。
水の中の小さな命を弄ぶ残酷な遊びを人は釣りと呼ぶ。
逃げ切れなかった魚を囲み素晴らしいと賞賛する。
もちろんそれを食す為にする釣りもある事だしそれはその釣り人の自由でいい。
未来、途絶え行く定めにある命を確かめる事が、僕等にとっての釣りであり、それを見守る事も釣りである。
平成7~10年頃に通った渓へ、20年後に再び訪れその変わり行く時を想う。
そこに現代も命があることが何よりも喜びだ。
次は何年後かはわからいが、何時かまたあの渓へ。
- 2018/03/04(日) 17:44:12|
- 鮭・鱒族疑似餌釣
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遅れ馳せながら ゆっくりと着実に今年も始まります。
このブログ気付いてみれば10年も続いています。
そして多くのかけがえの仲間との出逢いと素晴らしい時間を得る事が出来た事は人生にプラスになりました。
最近は海の小物やサーフでのルアー釣り、湖でのルアー釣り、渓流のフライフィッシングを中心に釣りを楽しんでいます。
釣行期やノウハウをここで語るのも良いのですが、それよりも釣りにどう関わり楽しむかを伝えたいと思っています。
幼少期から釣りを続けてきて、色々なフィールドへ出かけて、多くの釣師を見てきたからわかる事があります。
釣りは魚が釣れなければ楽しくないのは事実ですが、大物を釣り、数を釣りと 釣果だけを求める事も良いのですがそれだけでは寂しすぎます。
信念をもって釣りに挑めば、結果は付いてきます、大物に出逢うチャンスも降りてきます。
焦る事は無いのです、それよりも釣りを豊かにするのはそのフィールドの素晴らしい景色や空気であったり、仲間の笑顔であったり、思いもしなかった驚きや発見である事が殆どです。
大切な事が幾つかあるとすれば、キャスティングやランディングやノットなどの基礎の部分です。
それらには全て理由があって然るべき、なぜそのキャスティングなのか?なぜそこに釣り座を構えどこでランディングするのか?
ノットに不安要素は無いか?フックは完璧に研がれているのか?等、チャンスが来たときに掴み取る事ができるか否かはそこで明暗がわかれます。
魚を釣る事に上手い下手があるとすれば、きっとそれだけの事なのですね。
経験値を積み重ねるとさらに感覚が磨かれてどこで集中力を高め、どこで気を抜くべきかも見えてきます。
冬の時期、釣りは寒さが容赦なく体温と体力を奪い、あれこれと考えれば考えるほど脳が疲れます。
それでも出逢ったたった一匹の小さな魚を手にする事が出来たなら全てが報われる事もありますが、精根使い果てた挙句、一匹も得られない事もあります、実際はこちらのほうが多いでしょう。
それでも僕等は釣りをして魚を求めて行くことでしょう、その小さくて憎らしくて愛おしい一匹の為に。
- 2018/02/24(土) 00:40:37|
- 鮭・鱒族疑似餌釣
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渓流のルアーフィッシングにおいてこの3年ほど徹底的にスピナーを考えてみた。
独断的な解説をお許し頂くとして、これからスピナーを使ってみたい仲間達の為に僕の持ってるノウハウを此処に纏めさせて頂く。
結論から言えば、シャフト、ボディとブレードにフックを付けたシンプルなルアーであるが、ポイントに投げ込みリールを巻くだけの簡単な操作の中に奥の深い世界が存在しているということをまず念頭に置いて頂きたい。
スピナーというルアーはそもそも。
初心者のルアー、昔のルアー、糸が撚れて扱い難い・・・渓流魚の餌には似ても似つかない・・・・等、マイナスのイメージを多く持つアングラーも多いかと思う。
だが、実際に使い込んでいく事で見えてくる、ルアーとしての性能の高さ、安定感、実績は、シンキングミノーやスプーン等、他の渓流ルアーよりも一歩先を行っている様に思える。

それではどう使うのか?
その答えは、基本的にスローにステディリトリーブ。
不必要に抵抗を掛ける事無く、ブレードが回転する範囲で巻いてくる事。
レンジは回転するブレードが目視できる範囲で沈めても浮かせても良い。
それに少し慣れてきたら、安定したリトリーブの中に僅かブレードが回転しない間を与えるというのも良い。
投げて巻く、それだけで充分釣れるのであるが、ここまでは基本の話し。
ただし、そのリトリーブコースは何処でも良いわけではなく、仮に小さな渓流の場合、流芯を、そのセンターを一本引けば良い。
スピナーは他のルアーとは少し違い、アピールが強い分、二投目、三投目でフォロー的に入れるのではく、一発勝負になる。
リトリーブコースさえ間違えなければ、ほぼ一投目で答えが出るものである。

瀬ではストレートにアップクロス、又はアップストリームで使う、淵などではそこにリフト&フォールを組み合わせることもある。
一旦ヒラヒラとボトム付近まで落としてから、スゥーっとリトリーブへ可変させる方法も初夏以降のシーズンは魚が深みに沈んでいる事もあるので有効な使い方の一つであり、過去、カラフトマスの釣行ではこの方法が一番効果があった。
ここ最近では、あえてブレードを回転させずに流し込むドリフトからの縦ターンに効果が得られる事もわかってきた。
今シーズンキャッチした良型の魚は、この流し方であることが多い。
ドリフト中にもバイトが出るため、ブレードを回転させることが全てでは無いというのが今のところの見解である。

僕の場合、その全てをシングルフックへと交換している、具体的には管理釣り場用のシングルフックや山女針かチヌ針にケプラーのアイで自作している。
タックルは通常の渓流タックルで良いが、ロッドに関してはシンキングミノーを操作する為の高弾性カーボンのものでは無く、グラスや低弾性の曲がるロッドがお薦めであり、その理由としては、シャープにキャストした場合、スピナーは飛行中の軌跡を目で追うことが難しく、速度をギリギリまで抑えて緩くキャストする方がアキュラシーの面で有利であると云える。
ラインは蛍光のナイロンライン3~4ポンド程度をお薦めしたい。
これも糸撚れの面で色々言う方がいるが、実際スピナーを多用して効果を得ているアングラーで糸撚れを嘆く方は居ない。
僕の場合、その多くの釣行を70年代のミッチェル308と408で使用しているが、ライントラブルで困る事は無く、良くわかっていない方の間違った解釈ではないかと思われる。
必要以上にブレードを回して使わなければ糸撚れに困らされる事は無いはずだ。
次にスピナーの種類をここで限定する気は無いが、これからスピナーを初めて使う人に対しては、扱いやすさ、安価で買うことが出来て、入手が容易である事からブレットンの№2 3gをお薦めしたい。

関東から西の雪代の少ない地方、九州の小渓流であれば、ほぼ全てのポイントを№2 3gでカバーできる。
逆に少し水量の多い渓流では№3 5gを抑えておいても良いと思われる。
他にメップスアグリア、アグリアロング、ルブレックスセルタ、ベルチィック等の標準的なグループと、ABUドロッペン、パンサー、ルースターテール等のボディが重い良く沈むタイプのグループで大枠を分けることが出来る。
個人的には淵などの深い場所は、スピナーではなくスプーンで探る事が多い為、ドロッペン等の使用は少ないが、その効果のほどは数十年前から語られて来ているものであり、現代の釣り場でも実力は十分であろう。
ここまでが、現在の僕が釣りにおけるスピナーに関しての考え方。
これからも、更にこのルアーを使う事に磨きをかけて、その世界を楽しんで行くつもり。
僕等のわかったつもり、でも、それは大概、浅い部分、その世界の入り口でしかないのだから。
- 2017/10/14(土) 02:15:22|
- 回転式疑似餌針
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